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セミナー

東アジア古典学の方法 第72回
著者と語る(4)

日時
2022年3月8日(火)14時
会場
Zoomにてオンライン開催 *参加方法についてはお問い合わせください
講師
澤崎文(早稲田大学)
著者と語る(4)

基本情報

概要

「著者と語る」第4回は、早稲田大学大学の澤崎文先生を講師としてお招きし、ご著書『古代日本語における万葉仮名表記の研究』(塙書房、2020年)を取り上げます。

●講師
澤崎文(早稲田大学)

●ディスカッサント
松原舞(東京大学)

主催

科研「国際協働による東アジア古典学の次世代展開──文字世界のフロンティアを視点として」

当日レポート

 
 第4回の著者と語るは早稲田大学の澤崎文先生をお招きし、ご著書『古代日本語における万葉仮名表記の研究』(塙書房、2020年)についてお話ししていただきました。今回は新型コロナウイルス感染症の流行のため、オンラインでの開催となりました。
 澤崎先生はご著書の概要を紹介し、ご執筆の経緯と今後の課題について話されました。先生はまず、ご著書の要点を「一、古代の漢字万葉仮名交じり表記において、万葉仮名はその字母によって性格が異なり、使用箇所に違いが見られる」、「二、その際、字母としての漢字がどのように使われうるかといった可能性が字義として意識され、体系的に文字表記が実現している」、「三、宣命の万葉仮名において、清濁書き分けの表記意識は表記者の違いによって失われ、時代が下るごとに消滅する」と示され、それぞれについて実例とともに説明されました。その上で、ご著書が「日本語ではない言語の文字である漢字を、どのようにして日本語の表記に用いるか」というご関心から出発したものであることを話され、『万葉集』の研究や『古事記』の研究などとしてではなく、「日本語の研究」として「資料を超えて一般化できる現象を論じたい」という立場からご執筆されたことを述べられました。
 ご執筆の経緯については、卒論から大学院進学以降でどのようなご研究に取り組まれたのかから、大学院でどのようなご論文を読み込まれたのか、そして、どのような段階を経てご著書が完成するに至ったのかについてお話しされました。また、今後の課題としては、「文字列上の観察から得られた個々の万葉仮名の性格と、表記体という単位で見た際の万葉仮名の性格との関係を見いだすこと」、「表記体そのものの性格も明らかにすること」を挙げられました。
 先生のお話の後、コメンテーターを務めた東京大学特任研究員の松原舞さんがご著書の内容や論点を整理し、それらについて質問をしました。また、参加者からもご著書について、あるいは研究の方法などについて質問があり、さまざまな議論がなされました。
 今回は上代文学を専門にする大学院生の参加者も多く、先生には研究の内容だけでなく、研究の姿勢といった点でもご助言をいただき、大変有益な機会になりました。
 
(飛田英伸 東京大学博士課程)
 

「著者と語る」について

第一線で活躍する研究者をお招きし、その著作を題材として若手研究者が対話を行い、問題意識を共有しながら、東アジア古典学の新たな研究や方法について語りあいます。