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セミナー

東アジア古典学の方法 第71回
次世代ロンド(30)

日時
2022年1月29日(土)13:30
会場
Zoomにてオンライン開催 *参加方法についてはお問い合わせください

基本情報

概要

求思圓(京都大学 博士課程)
「田辺石庵編明清文人文集の成立」

趙偵宇(京都大学 非常勤講師)
「黄遵憲と『新文詩』、『明治詩文』」

コメンテーター:具惠珠(国文学研究資料館)・関谷由一(北海道教育大学)

主催

科研「国際協働による東アジア古典学の次世代展開──文字世界のフロンティアを視点として」

当日レポート

今回の次世代ロンドは新型コロナウイルス感染症の流行のため、オンラインで行われました。
求思圓さん(京都大学博士課程)のご発表「田辺石庵編明清文人文集の成立」は、『王陽明文粋』(文政11年/1828)や『方正学文粋』(文政12年)など、明清期の文人の文集を編纂した江戸後期の儒者田辺石庵の活動を取り上げ、その特色を論じたものでした。まず、石庵が編んだ文集が河内屋茂兵衛によって刊行された「文粋」シリーズの一部であったことが示され、石庵が茂兵衛の依頼によって編纂を行ったこと、石庵の編纂本が「文粋」シリーズの中心的位置を占めたと見られることが述べられました。続いて、石庵の文学観についての考察がなされ、石庵が唐宋の古文を模範とする一派の文集を刊行したこと、それを通して思想内容を重視する文章の普及を図ったことが指摘されました。
求さんのご発表に対し、コメンテーターの具惠珠(国文学研究資料館)さんは、別集に「文粋」を用いる先例の有無、文集の読者層、後代への影響などについて質問しました。また、出席者からは明清期の漢文の需要や文集の選択基準などについて質問がありました。
趙偵宇さん(京都大学非常勤講師)のご発表「黄遵憲と『新文詩』、『明治詩文』」は、明治初期に来日した清朝の詩人黄遵憲と当時の日本の詩人たちとの交流について論じたものでした。具体的には明治期に刊行された漢文雑誌である『新文詩』および『明治詩文』の誌面に焦点を当て、どのような人々と交流がなされ、その詩文や評語がどのように受容されたのかが示され、黄遵憲との交流が誌面に新風をもたらしたことが述べられました。
趙さんのご発表に対し、関谷由一さん(北海道教育大学釧路校)は、誌面の変化や交流の実態についてより具体的な情報を求めるとともに、明治初期の交流がその後の漢詩壇にどのようにつながったのかなどを問いました。また、参加者からは『新文詩』と『明治詩文』の違いや、その後の漢詩の展開との関係についてさらに質問がありました。
今回のお二人のご発表は十九世紀の日本と清朝中国と関係に焦点を当てたものであり、近代日本における漢詩文の展開がどのような土台の上に起こったのかについて、書物の移入と人物の交流という具体的な事例から考える有意義な機会となりました。
 
(飛田英伸 東京大学博士課程)
 

次世代ロンドについて

 科研プログラム「東アジア古典学の次世代拠点形成──国際連携による研究と教育の加速」(代表:齋藤希史)では、2016年度より、若手研究者による研究発表・交流の場として「次世代ロンド」を立ち上げました。
 大学院生やポスドク、助教、講師などの若手研究者から発表者を募り、自らの所属機関以外の場所での発表を奨励するのが特徴です。コメンテーターも同様に若手研究者から募集し、所属機関の枠を超えた研究交流の促進を図るものです。