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セミナー

東アジア古典学の方法 第69回
北京大学セミナー(2)

日時
2021年11月19日(金) 14:00(北京時間)
会場
北京大学(オンライン)
講師
徳盛誠(東京大学)
北京大学セミナー(2)

基本情報

概要

徳盛誠(東京大学)
「変容するテキストとしての『日本書紀』――十五世紀までの事例をめぐって」

参加学生は北京大学外国語学院日本語言文化系で学ぶ学部生及び大学院生です。

主催

科研「国際協働による東アジア古典学の次世代展開──文字世界のフロンティアを視点として」
北京大学外国語学院日本語言文化系

当日レポート

 北京大学外国語学院日本語言文化系で学ぶ学部生及び大学院生を対象に、2回目のセミナーをオンラインで実施しました。今回は徳盛誠先生が「変容するテキストとしての『日本書紀』――十五世紀までの事例をめぐって」という題で発表を行いました。
 まず、『日本書紀』が成立以降、さまざまな注釈が付されてきたことが示され、時代や解釈者によってさまざまな変容が加えられてきたことが述べられました。次に、『日本書紀』が漢文の叙述に訓注を加えたテキストであることが確認され、訓注が日本語のニュアンスを伝える機能と、日本語の表現を漢文に翻訳したものであることを伝える機能とを有していることが指摘されました。続いて、9世紀から10世紀の平安期の講書、12世紀末の卜部兼方の『釈日本紀』、15世紀半ばの一条兼良の『日本書紀纂疏』、15世紀末から16世紀初めの吉田兼倶と清原宣賢による解釈が取り上げられ、それぞれの注釈のあり方について論じられました。具体的には、平安期の講書では『日本書紀』の叙述全体が訓読され、漢文叙述に先んじて存在していたはずの和語表現を探るとともに、ふさわしい和訓を探求することが行われたこと、『釈日本紀』では和と漢をどのように位置づけるかが議論されたこと、『日本書紀纂疏』では『日本書紀』を漢文テキストとして解釈することがなされたこと、兼倶と宣賢による解釈では和訓が再び導入され、和訓が漢籍のことばと同等の価値を持つものとして扱われたことが述べられました。
 今回の内容は、前回のセミナーでも触れられた『日本書紀』と和語との関係についてさらに議論を進めたものであり、上代から中世に至る日本での漢文と和文との関係について前回から継続して学ぶことができました。
 
(飛田英伸 東京大学博士課程)