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セミナー

東アジア古典学の方法 第70回
北京大学セミナー(3)

日時
2021年12月24日(金) 14:00(北京時間)
会場
北京大学(オンライン)
講師
金沢英之(北海道大学)
北京大学セミナー(3)

基本情報

概要

金沢英之(北海道大学)
「最澄と『異本上宮太子伝』――平安期における『日本書紀』の変奏」

参加学生は北京大学外国語学院日本語言文化系で学ぶ学部生及び大学院生です。

主催

科研「国際協働による東アジア古典学の次世代展開──文字世界のフロンティアを視点として」
北京大学外国語学院日本語言文化系

当日レポート

北京大学外国語学院日本語言文化系で学ぶ学部生及び大学院生を対象に、3回目のセミナーをオンラインで実施しました。今回は金沢英之先生が「最澄と『異本上宮太子伝』――平安期における『日本書紀』の変奏」という題で発表を行いました。
発表では、『日本書紀』に由来する聖徳太子伝のうち、9世紀初頭になった『異本上宮太子伝』に焦点が当てられ、その成立に最澄が関与していると考えられることが論じられました。まず、『異本上宮太子伝』が鑑真の宗祖である慧思が転生して聖徳太子となったことを説くものであることが示された後、最澄が著した『天台法華宗付法縁起』に『異本上宮太子伝』と重なる部分があることが述べられました。そして、『異本上宮太子伝』が『天台法華宗付法縁起』に継承されたのではなく、『天台法華宗付法縁起』が『異本上宮太子伝』となったと考えるべきであることが根拠とともに論じられました。最後に、最澄における聖徳太子像が天台の教えを奉ずることが国家を支えるという主張を形成するものとなっていることが指摘され、後代においてその像がどのように変容していったのかについてもその概観が示されました。
今回の話題は『日本書紀』について取り上げたものとして前回および前々回のセミナーから継続しており、3回のセミナーを通して『日本書紀』をめぐるさまざまな論点が示されました。今年度の北京大学セミナーは今回が最後となりますが、来年度も引き続き開催を予定しています。
 
(飛田英伸 東京大学博士課程)